日本監査研究学会

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過去の会長挨拶
2021年7月

会長 堀江正之(日本大学商学部)

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 本学会の会長を引き受けてから3年が経過しました。任期の後半は新型コロナ禍の中で、本学会の今後のあり方を巡って考えさせられることが少なからずありました。
 大会・部会はリモート開催を余儀なくされましたが、参加者の大幅な減少は杞憂に過ぎませんでした。参加者の増加は喜ばしいことです。しかし問題意識の方が高まりました。
 本学会では、これまで東西を切り分けて、それぞれ「部会」という名称で研究報告会を開催してきました。私自身、その意味を深く考えもせず、当たり前のように受け止めていました。ところが、新型コロナによって2020年度の東日本部会を中止とせざるをえなくなり、西日本部会に東日本側会員の参加も認めてもらえることになりました。言うまでもなく、リモート技術があってできたことです。
 このことは、東西部会に切り分けることの意味だけでなく、集合方式を当たり前としてきた研究報告会のあり方についても考えさせられました。対面でなければできないことは何か、リモートの方が効率的なことは何か、リモートの強みを活かした新たな試みができないかどうか。今後のこともあり、そのようなことを考えてみるよいチャンスと捉えるべきではないでしょうか。コロナが去ったら元に戻すといった姿勢ではいけないと思います。
 翻って、監査の現場に目を向けてみましょう。外部監査であれ内部監査であれ、新型コロナ禍にあっても「何とかうまく切り抜けることができた」といった声をよく聞きます。確かに監査の現場を支えられた方々のご尽力あってのことです。言葉にせずとも、さまざまなご苦労があったことは想像に難くありません。しかし、多くの方々からお聞きしたこの言葉は、いずれはコロナの前に戻ることを前提としているように思えてなりませんでした。
 先行き不透明な時代に突入しています。それゆえ、学会と実務界との「緊張感をもった」連携を強めてゆく必要があります。もちろん危機意識の共有が前提です。本学会は、その研究対象の性質上、監査実務の現場と切っても切れない関係にあります。監査実務もそれを支える理論的支柱は不可欠でしょう。片方が沈没に向かえば、他方も無傷ではいられないはずです。
 それぞれが伝統的な枠組みやしがらみに囚われていては、発展は望めないでしょう。力及ばす実現できませんでしたが、関連学会との共同大会の開催や共同研究会の立上げなどを探っていました。少しでも違う風が入ることが学会の活性化につながり、さらにはそれが監査実務へと伝播してゆくことを願ったからです。
 2021年度の東西部会の統一論題は、ともに非財務情報に対するアシュアランス問題を扱いました。同年の全国大会も「将来の財務報告における監査人の役割」が統一論題です。各登壇者の個別テーマには、「非財務情報」、「テクノロジーの進化」、「企業報告」、「将来の企業経営」といった用語が並び、監査の新しい流れを探る意図が伺えます。
 時代の流れといってしまえばそれまでですが、やや大袈裟な言い方をすれば、監査のパラダイム転換の狭間に差し掛かっているように思えてなりません。大きな転換が求められていることは、教育現場でもいかがえます。会計学科や会計コースの人気の低下は無視できないところまできているように見えます。それゆえ、上で述べたような「元に戻る」といった姿勢が少しでも感じられるようなことがあれば、学生に見放されること間違いないでしょう。我々が思う以上に若者は時流に敏感です。
 伝統的な会計や監査といった狭い枠に留まって同じような議論を繰り返していては、益々、世間の感覚とずれてしまうのではないでしょうか。
 私は、決して悲観的になっているわけではありません。これから「変わらなければならない」ということは、新しい地平を切り拓くことでもあります。学会こそが、監査の未来に向けた前向きな議論ができる「場」であってほしいと思います。

2021年7月記

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