日本監査研究学会

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過去の会長挨拶
2012年10月

会長 高田敏文(東北大学会計大学院)

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 2012年9月の全国大会において会長に選出されました高田敏文です。3年間の任期でありますが、皆様のご協力をいただき、日本監査研究学会の発展のために尽力して参りますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 日本監査研究学会(以下「学会」、「本学会」と略します。)は、その設立以来、多くの先達のご尽力により今や会員数450名を数え、監査の研究・教育についての蓄積と貢献において、会計系学会の中でも重要な学会としての地歩を固めて参りました。その活発な研究活動の成果が、わが国の監査制度と監査実務に対しても大きな貢献をなして参りましたことは、皆様ご承知の通りです。私は、会長として、現在の学会の到達点をふまえ、さらなる発展のために下記の重点施策を実施して参る所存であります。

 会長選挙の公約にかかげましたとおり、私は3本柱の重点施策を具体化させたいと考えております。第一の施策は、監査研究のさらなる向上です。皆様ご承知のとおり、どのような学問領域におきましても、研究に国境はありません。本学会の活動は、全国大会、東西部会を中心として日本国内で実施されてきましたし、当然のこととして学会報告も日本語で行われてきました。また、学会の広報につきましても、ウェッブページを含め日本語のみで行われています。その一方で、会計系の国際学会は、アメリカ会計学会を筆頭にしてアジア太平洋地域におきましても複数の国際学会が開催されており、アジア諸国からも多数の会計研究者が参加・報告しています。では、本学会会員は、監査研究の国際化に対応してきたでしょうか。残念ながらその答えは十分とは言えません。私は第一の施策として本学会の研究を国際水準に向上させることを掲げたいと存じます。本学会の会員が全国大会、東西部会で報告した後、ぜひ国際学会においても報告していただきたいのです。学会はそのことを可能とするお手伝いをしなければなりません。具体的には、(1)国際学会での報告を経験している会員によるチュートリアル・セミナーを全国大会のプレセッションとして開催すること、(2)国際ジャーナルに投稿するための論文の書き方や実証研究手法等について、同様のセミナーを開催すること、(3)インターネット・ジャーナルをアジア地域における監査研究・教育にかかるリーディング大学、学会組織と連携して立ち上げること等を当面の施策として検討し、実施に移して参りたいと存じます。

 第二の施策は、監査制度、監査実践と監査研究との連携を強化することです。本学会会員の半数は実務家の方々です。本学会はその名の示すとおり、監査研究を実施・推進することを目的とした学会です。そのことは会則にも明記されています。先般、アメリカ会計学会の会長レターが届き、その中である問題が提起されていました。アメリカ会計学会の監査部会(Auditing Section)では、その部会専属の機関誌として”Auditing”を発刊しています。その副題の中にPracticeという文言が入っていることに対して、アメリカ学会の会員の一部から「研究を目的としている学会の機関誌の名称にPracticeが入っていること」に対する問題提起があったので、皆さんで議論していただきたいと会長レターには記されていました。つまり、問題提起者は、監査研究と監査実践とを峻別せよと言いたかったのだと思われます。この提起はアメリカだけの話ではなく、本学会のあり方に対しても核心的な問題を内包していると私はそのときに考えました。学会は研究のための組織ですから、学会で自らの経験談を「研究報告」されたとすれば、それは問題です。しかし、監査研究は、監査制度も含めて監査実践を踏まえている必要がありますし、またその逆に監査研究の成果が、監査制度や監査実践の中で活かされることがあって当然であると私は考えています。監査研究の一部は、その意味では工学の研究と似ているかもしれません。すでに日本公認会計士協会や監査法人から本学会が受託した調査研究も行われてきました。研究と実践との良い意味での連携をこれからも積極的に推進して参りたいと私は考えて、このことを公約の第二として掲げた次第です。

 第三の施策は、監査教育あるいはより広く会計教育に対して本学会が貢献することです。研究の成果は、最終的には社会に還元される必要があります。監査研究の成果を社会に還元する方法の一つが教育です。監査教育は、大学や大学院のみではなく、実務界におきましても、教育を目的とした財団法人が組織され、また必ずしも教育に特化しているわけではありませんが、会計にかかる国際機関が東京に設置されることも決まっています。アカデミアの世界におきましては、今から8年前に学校教育法が改正され専門職大学院の設置が認められるようになりました。その結果として、会計分野の専門職大学院(以下「会計大学院」と略します。)が全国18の大学に設置され、監査教育や会計倫理教育が実践されています。教育は百年の計と申しますとおり、新しい教育機関としての会計大学院ができたからと言って、すぐにその成果が出るわけではありませんが、大学院レベルで理論的・実践的な監査教育が実施されていることは、本学会としても世界に誇ってよいことであると私は考えています。国際会計士連盟教育審議会が国際(会計教育)基準を策定したときに、本学会では会計教育にかかる課題別研究部会を設置し、国際基準の内容を紹介するとともに当該基準がわが国の会計教育や資格試験制度のあり方に大きな影響を与える可能性があることをその報告書で公にしました。また、アメリカ会計学会も教育部会を設置し機関誌を発刊していますし、国際的な組織や学会も、会計教育にかかる多様な活動を展開しています。監査教育に対する本学会の貢献は非常に重要です。私は、そのための具体的な施策として、監査教育やその柱の一つである会計倫理教育についてのコアカリキュラム、標準的シラバスを研究し、その成果を情報発信する部会を設置することをぜひ提案したいと考えています。

 以上のような次第で、会員の皆様に加盟して良かったと言っていただけるような学会活動を積極的に展開して参りますので、上記の施策に限らず、本学会に対するご意見、ご要望を理事、事務局、事務連絡所にお寄せくださいますようお願い申し上げます。

2012年10月1日

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