日本監査研究学会

お問合わせ
各種申込み
Message

過去の会長挨拶

会長 松本祥尚(関西大学)

会長画像

 この9月の第47回全国大会をもって3年間の会長任期を何とか満了することができました。これも常務理事・理事・監事・幹事としての真摯な職務遂行によって学会運営を支えてくださった21名の先生方に加えて、東西部会と全国大会の開催をお引き受け頂けた準備委員会の先生方のおかげと心より感謝申し上げます。またもちろん学会活動にご協力・ご参加頂いた会員の先生方からの積極的なご支援も忘れることはできません。学会運営にしろ学会活動にしろ、その全ては監査研究や監査教育に深い関心をお持ちの先生方によるボランティアによって支えられた存在です。引き続き学会活動への前向きなご支援をお願い致します。
 さて、この3年間はコロナ禍が明けて全面的な対面による大会の開催が可能となった時期でした。お陰様で今年の第47回西日本部会と第46回東日本部会も懇親会を含めて対面で開催頂けました。会長に就任以来、私が切に願い続けた完全対面による会員同士の直接交流が開催校の先生方のご尽力で可能となりました。この場を借りて久留米大学と大原大学院大学の先生方や運営に協力してくださった学生さん達には御礼申し上げます。またこの9月には立命館大学において全国大会を対面で開催していただける予定です。
 私が在任中の課題の一つとして掲げた監査に携わる監査研究者や監査実務者の増加に関しては、残念ながら目に見えるような大きな成果を得ることはできませんでした。設立以来、本学会が日本学術会議登録団体(現在は協力学術研究団体)として認められてきたことは、監査論を専攻する研究者を増やさなければならないという使命を負っていることの間接的な証拠でもあります。アメリカの大学や大学院でもそうですが、監査論は税務会計論等と同様に会計学系の応用分野に位置付けられており上位学年に配当されるという科目固有の限界はあります。とは言いながらも、任意であろうと法定であろうと利害調整支援や意思決定支援といった観点から、監査や保証が経済社会における基盤の一つであることも事実ですから、研究でも実務でも監査が忌避される情況は学会として見過ごせないと思います。そのような観点から、優秀な研究を顕彰するだけでなく、新たに優秀な監査教育への貢献に対する表彰制度を設けることができました。学会賞審査委員の先生方には、これまでにも増してご苦労をお掛けすることになりましたが、監査教育の重要性を学会として改めて強調することができたと思っています。
 また国際的にも国内的にも制度の新設や変更に当たっては、Evidence-Based Policy Making (EBPM)が推進されています。同じように会計基準や監査基準では、その新設や改訂後、Due Processの一環として適用後レビューが必須となっています。制度設計時には制度比較やそのあるべき姿、さらには制度趣旨からの規範的な研究が必要であり、その後は当該制度の趣旨に対する有効性や実効性を実務的観点から客観的に評価するという実証的な研究が必要となります。本学会は、研究領域的にも構成会員的にも正しく規範的な研究と実証的な研究の両方を可能とする学会であり、研究と実務の有機的な融合を達成することができます。このような観点から、在任中のもう一つの課題であった中立の学会としての独立した適用後レビューの制度を設けることができました。今後はこの独立した適用後レビューの実施により監査基準等の導入趣旨に対する実効性や有効性を証明することが可能となると考えます。
 会長就任時に課題として挙げたもののうち、残念ながら手を付けることのできなかったものが学会活動の国際化でした。監査論研究でも監査基準や実務指針の改訂・改正でも以前にも増して国際的な研究成果や基準等を無視することができなくなっています。このため学会からの国際的な情報発信や国際交流までもが必要であるにもかかわらず、私の非力さ故に手付かずとなってしまいました。この不作為につきましては、会員の先生方に深くお詫び申し上げなければなりません。
 本学会が理論的・実務的側面から検証すべき、或いは検討すべき課題は、今後もますます増えていくと考えられます。また監査を好きになれるような監査教育によって、学界や実務界への参入希望者の増加も我々にとって必須の課題です。このような課題に対して表面的な議論に留まることなく、ヨリ深みのある実質的な議論をするためには、研究者と実務家の先生方との情報共有は不可欠であり、全ての学会員の協働作業が必要であることは言うまでもありません。
 今後とも会員の先生方からの学会に対する引き続きのご支援とご指導を心よりお願い申し上げる次第です。会員の先生方におかれましては、本学会活動に対するご要望やご意見を、学会役員、事務局、事務連絡所までお寄せくださいますと幸いです。

(2024年8月記)

●アーカイブ一覧
2025年4月 2024年8月
2023年8月 2022年8月 2021年9月
2021年7月 2020年7月 2019年8月
2018年8月 2017年8月 2016年8月
2015年10月 2014年9月 2012年10月
2010年1月 2009年8月 2008年8月
2007年8月 2006年10月 2004年4月
ページトップへ戻る